コラム
ドローン飛行の申請方法まとめ|東京湾・お祭り・商業撮影などシーン別に解説
投稿日/2025.09.18
ドローン申請方法を調べると、思った以上に多くの法律やルールが関わっていることに驚く方も少なくありません。
航空法を中心に、小型無人機等飛行禁止法、道路交通法、河川法、自治体の条例など、飛行環境によって必要な手続きは大きく変わります。
さらに、人口集中地区やイベント会場といった特定のシーンでは、複数の承認が重なることもあります。
こうした申請を理解するのは簡単ではありませんが、全体像を把握しておくことでトラブルや違反を未然に防ぐことが可能です。
本記事では、ドローン飛行に関わる申請方法を法律別・シーン別に整理し、申請の流れや注意点をわかりやすく解説します。
この記事の目次
ドローン申請の基本的な流れ
ドローンを飛ばすには、どこで・どのように飛行するかを明確にしたうえで、関係する機関に必要な申請を行わなければなりません。
ドローン申請の基本的な流れは、次のとおりです。
■ 【Step1】飛行場所や方法を整理し、規制対象かどうかを確認する
■ 【Step2】関わる法律や条例を調べ、必要な許可の種類を把握する
■ 【Step3】国土交通省「DIPS」や自治体・警察署など、管轄機関へ申請する
■ 【Step4】承認を得たら、飛行計画を提出し、許可証を携帯する
この流れを踏まえることで、申請の見落としを防ぎ、安全かつ合法的にドローンを運用できます。飛行当日に慌てないためにも、余裕を持った準備を欠かさないようにしましょう。
ドローン申請に関わる主な法律や条例
ドローンの飛行は、国の法律から自治体の条例まで、複数のルールが重なって規制されています。どの法律に当てはまるかは飛行場所や目的によって異なるため、申請前にしっかり確認しておくことが重要です。
主に関係する法律や条例は、次のとおりです。
■ 航空法(夜間・目視外・人口集中地区などの飛行制限)
■ 小型無人機等飛行禁止法(国会議事堂や皇居などの重要施設周辺)
■ 道路交通法(公道上空での離着陸や低空飛行)
■ 河川法・港則法(河川や港湾区域での飛行)
■ 自治体の条例(公園や観光地などの独自ルール)
■ 土地所有者の承諾(私有地や商業施設などの敷地内)
飛行計画を立てる際は「自分のケースではどの法律が適用されるのか」を整理しておくことが、安全でスムーズな運用につながります。
航空法
航空法では、特定の空域や方法でドローンを飛行させる場合には、国土交通省への許可・承認申請が義務付けられています。
申請は飛行開始予定日の少なくとも10開庁日前までに行う必要がありますが、不備があると審査に時間がかかるため、余裕を持った準備が欠かせません。
原則として総重量100g以上のドローンに適用されます。
■ 申請先
東京航空局または大阪航空局。空港周辺や150m以上の空域を飛行する場合は、東京空港事務所や関西空港事務所が管轄します。
■ 申請方法
オンライン(国交省DIPS)、郵送(メール含む)、窓口への持参が可能です。
■ 申請方法の種類
【包括申請】:業務利用を前提に、日本全国で1年間の飛行をまとめて承認できる制度。天候不順やルート変更があっても柔軟に対応可能。
【個別申請】:イベント上空や空港周辺など、包括申請では認められない条件で飛行する場合に必要。
■ 飛行禁止空域
・空港等の周辺上空
・150m以上の高さの空域
・人口集中地区(DID)上空
・緊急用務空域
■ 申請が必要となる主な飛行方法
・夜間飛行
・目視外飛行
・人や建物から30m未満での飛行
・イベント上空での飛行
・危険物輸送
また、航空法の申請には、飛行経路の地図や機体仕様書、飛行マニュアルなど多数の書類が求められます。
小型無人機等飛行禁止法
小型無人機等飛行禁止法は、航空法とは別に重要施設の上空での飛行を規制する法律です。特徴的なのは、総重量100g未満の小型ドローンも含め、すべての無人航空機が対象となる点です。
違反した場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が課せられます。
■ 通報書の提出先
・飛行場所を管轄する警察署
・皇居や赤坂御用地などの場合は、管轄警察署を経由して皇宮警察本部長へ提出
■ 申請方法
・飛行開始の48時間前までに、飛行区域を示す地図を添付して所定の通報書を提出
・施設管理者から同意を得た場合は、同意を証明する書面を併せて提出
・国や自治体の委託事業である場合は、委託を証明する書面を提出
■ 機体の提示
実際に飛行するドローンの提示が必要です。困難な場合は機体の写真でも認められますが、現場で確認を求められることもあるため注意が必要です。
■ 飛行禁止の対象となる主な施設
・国会議事堂や首相官邸
・皇居、赤坂御用地、仙洞仮御所
・各省庁庁舎や政党事務所
・原子力関連施設 など
この法律は公共の安全を最優先するためのものです。趣味や商業利用にかかわらず、対象施設周辺での飛行には必ず事前通報を行い、ルールを順守することが求められます。
道路交通法
道路交通法では、第77条に基づき「道路で工事や作業を行う場合」には事前に道路使用許可が必要とされています。ドローンの離着陸を道路上や路肩で行う場合もこれに該当し、管轄の警察署への申請が求められます。
また、道路を走行する車両や歩行者に影響を与えるような低空飛行を行う場合も、同様に道路使用許可が必要です。
■ ドローン飛行許可の申請先
・飛行場所を管轄する警察署
■ 道路使用許可申請の方法
・「道路使用許可申請書」を作成
・使用場所や方法を明記した図面を添付
・管轄の警察署へ提出し、許可証を取得
道路交通法の手続きは航空法や小型無人機等飛行禁止法とは異なり、地域の警察署が窓口です。
飛行場所が道路に接している場合は、離着陸が短時間でも対象となる可能性があります。少しでも心配があるような場合には、必ず事前に確認するようにしましょう。
河川法・港則法
河川や港湾の上空でドローンを飛行させる場合は、航空法だけでなく「河川法」や「港則法」に基づく申請が必要になることがあります。
特に水面上での飛行は、船舶の航行や河川管理に影響を与える可能性があるため、事前の調整が欠かせません。
■ 河川法に基づく申請先
・河川を管理する国土交通省や都道府県の河川管理者
■ 港則法に基づく申請先
・港湾区域を管轄する海上保安部や港湾管理者
■ 申請方法
・飛行区域や使用方法を記載した申請書を作成
・飛行経路を示す地図を添付
・管轄する管理者に提出し、承認を得る
■ 許可・届出を要する場合
ドローンを飛行させるために、海上に作業船を配置又は海上に工作物を設置する場合
(例)
・競技や曲技飛行でパイロン等の工作物を設置する場合
・ドローン飛行イベントを開催し、観覧船で混雑が見込まれる場合
など
■ 許可・届出を要しない場合
(1)陸上から飛行させるケース
・港湾施設や船舶、海域など、海上にある物件などの状況を撮影する場合
・橋梁や荷役施設などを点検・測量する場合
・荷物配送のために海上を通過するだけの場合
(2)船舶を使用するケース
・操縦者が乗船する船舶が他船を避けられ、ほかの船に支障がない場合
・撮影対象の船舶が他船を避けられ、航行に支障がない場合
河川や港湾は公共性が高いため、撮影や調査などの目的であっても無許可での飛行は原則認められません。特に船舶が頻繁に行き交う港湾区域では、港則法に基づく安全確保が重視されます。
水辺での空撮を計画する場合は、必ず管理者に相談し、必要な手続きを早めに進めることが重要です。
自治体の条例
ドローンの飛行は、国の法律だけでなく各自治体が定める条例でも規制されている場合があります。特に公園や公共施設では「ドローン禁止」と明記された看板やポスターを見かけることも多く、許可なく飛行させるとトラブルにつながる恐れがあります。
そのため、飛行を予定している場所が自治体の管理下にある場合は、必ず事前にルールを確認することが大切です。
■ ドローン飛行の確認先
・各都道府県庁
・市町村役場や公園管理事務所
自治体の条例はエリアごとに大きく異なり、同じ県内でも市町村によってルールが異なります。
観光地や公園での飛行を検討する際は、事前に公式サイトや管理事務所へ確認し、必要に応じて申請や許可を得るようにしましょう。
所有者の許可
ドローンの飛行は、国の法律や自治体条例に加えて、所有者や管理者からの許可も重要です。特に私有地や商業施設の敷地内での飛行は、所有者の同意がなければトラブルになりかねません。
また、観光地やテーマパークなどでは独自のルールを設けているケースも多く、無断飛行は規制違反とみなされる場合があります。
■ 許可が必要となる例
・私有地上空での飛行(住宅地・農地・企業敷地など)
・商業施設や観光施設の敷地内での撮影
・イベント会場や撮影用ロケ地での飛行
■ 許可を得る方法
・土地所有者や管理会社に事前に連絡し、飛行の目的や範囲を説明する
・必要に応じて承諾書や利用許可証を取得する
・商業撮影の場合は契約書や利用規約に基づいた正式な手続きを要する可能性もある
土地所有者の承諾は法律上の義務ではない場合もありますが、後々のトラブルを避けるためには欠かせません。
特に商業撮影や映像の公開を予定している場合は、権利関係を明確にしたうえで飛行を行うことが安全策となります。
【シーン別】ドローン飛行に必要な申請・許可
ドローンの申請は法律ごとに整理できますが、実際には「どこで飛ばすか」「どんな目的で使うか」によって必要となる許可が大きく変わります。
ここからは、代表的なシーンごとに必要な申請や許可について整理していきます。
■ 東京湾でドローンを飛ばす場合
■ 地元のお祭りでドローンを飛ばしたい場合
■ 観光地や公園でドローンを飛ばす場合
■ 商業撮影・テレビや映画撮影を行う場合
■ 自社の建物内でドローンを飛ばす場合
詳しく見ていきましょう。
東京湾でドローンを飛ばす場合
東京湾の船上からドローンを飛行させる場合には、関係する機関への申請や届出が複数必要です。
単に航空法の承認だけでは不十分で、港湾や海上交通に関するルールを守ることが欠かせません。
■ 必要となる主な申請・届出先
・国土交通省 航空局(包括申請・個別申請)
・海上保安庁(港則法に基づく安全確保の届出)
・東京都港湾局(港湾区域での活動許可)
・所轄の警察署(道路交通法やイベント関連の届出)
・マリーナなど船舶関連団体(10以上の関係団体に調整が必要なケースもあり)
東京湾のように利用者が多いエリアでは、法律・条例に加え、港湾管理や船舶利用者との調整が不可欠です。
地元のお祭りでドローンを飛ばしたい場合
地元のお祭りのように人が密集するイベント上空でドローンを飛ばす場合は、ドローンの落下による観客への接触、屋台の火気や電線への衝突、騒音による妨害、無断撮影によるプライバシー侵害など、特に事故やトラブルのリスクが高くなります。
危険要因は多岐にわたることから、複数の法律や規制の申請や承認を受けなければなりません。
■ 関わる主な法律・規制
・航空法:イベント上空の飛行は「禁止飛行」に該当し、国土交通省への承認が必要
・道路交通法:公道や広場上空を使用する場合、所轄の警察署に道路使用許可を申請
・自治体条例:会場が公園や公共施設なら、自治体の禁止規定や管理事務所の許可が必要
・主催者ルール:イベント主催者の同意なしに飛行は不可
■ 申請先の一例
・国土交通省 航空局(DIPS申請)
・所轄の警察署(道路使用許可)
・自治体や会場管理者(条例・施設ルール)
・お祭りの主催者(運営側の承諾)
安全に撮影するため、主催者への事前相談と法的な許可取得を必ず行いましょう。
観光地や公園でドローンを飛ばす場合
観光地や公園は観光客や利用者が多く集まる場所のため、ドローン飛行にはさまざまなリスクが伴います。
機体の落下や衝突によるけが、騒音やプライバシーの侵害、文化財や自然環境を損なう可能性などが懸念されます。
そのため、条例や施設ルールでドローンの利用を制限している自治体も少なくありません。
■ 関わる主な法律・規制
・航空法:人口集中地区(DID地域)に該当する場合は国土交通省への申請が必要
・自治体条例:公園条例や観光地の独自規制により、原則禁止や許可制となっているケースが多い
・施設管理規則:世界遺産や観光名所では管理者が独自の禁止ルールを設けている場合あり
■ 申請先の一例
・自治体(都道府県、市町村)の担当部署や公園管理事務所
・観光地の管理団体や文化財管理者
・国土交通省 航空局(DIPSを通じた飛行申請)
観光客が多い場所での無許可飛行は、重大事故や観光地のイメージ低下にもつながりかねません。
飛行を検討する際は必ず管理者に確認を行い、必要な許可を得ることが不可欠です。
商業撮影・テレビや映画撮影を行う場合
撮影には大規模な機材やスタッフが関わり、観客や通行人が映り込む可能性もあるため、トラブルを避けるための事前調整が不可欠です。
■ 関わる主な法律・規制
・航空法:夜間飛行や目視外飛行、イベント上空での飛行は承認が必要
・土地所有者の許可:私有地や施設内での撮影は必ず管理者の承諾を得る
・自治体条例:公園や観光施設内での撮影には独自の規制がある場合あり
・肖像権・著作権:人物や建築物を映す際には法的配慮が必要
■ 申請先の一例
・国土交通省 航空局(DIPSを通じた申請)
・土地所有者や施設管理者(ロケ地利用許可)
・自治体の担当部署(条例に基づく許可)
商業撮影では、飛行そのものの安全確保に加えて、撮影素材の利用に関わる権利処理も重要です。
安全面・法令面・契約面をすべてクリアすることで、安心して映像制作を進められます。
自社の建物内でドローンを飛ばす場合
自社の建物内でドローンを飛ばす場合は、屋外と異なり、航空法などの規制は適用されません。国土交通省への申請や自治体条例も対象外です。
ただし、建物の所有者や管理者が自社であっても、安全管理は不可欠です。
■ 注意すべきポイント
・社員や利用者がいる場合は、安全確保のための飛行ルールを定める
・機体の衝突による建物や設備の破損に注意する
・社内規定や管理者の承諾をあらかじめ確認する
屋内は規制がないからこそ、事故が起きた場合はすべて自己責任となります。業務や練習でドローンを活用する際は、十分な安全対策を行うことが大切です。
(関連記事:【動画あり】屋内でもドローン撮影できる!室内空撮の活用事例や注意点も解説)
まとめ
ドローンの申請方法は、一見すると「航空法の申請さえすればよい」と思われがちですが、実際には小型無人機等飛行禁止法や道路交通法、河川法・港則法、自治体の条例など、飛行場所や状況によって複数の法律や規制が関わります。
安全にドローンを運用するためには、操縦技術だけでなく、事前に関係機関へ確認や申請を行い、関係者の理解と協力を得ることが欠かせません。
準備をしっかり整え、トラブルや法令違反にならないようにしていきましょう。