コラム
ドローンは私有地の上空を飛ばせる?法律の見解と飛行時の注意点
投稿日/2025.08.15
ドローンを飛ばす場所として「自分の土地ならドローンを自由に飛ばせるのではないか」と考える方は多いですが、必ずしもそうとは限りません。
反対に「他人の土地の上空は絶対に飛んではいけないのでは」とも思われがちですが、私有地の上空でのドローン飛行には、民法や航空法など複数の法律が関わっており、飛行できる・できないを一律に判断できないのが現状です。
本記事では、内閣官房の見解をもとに、私有地上空での飛行がどのような条件で可能なのか、所有者との関係や飛行方法によって何が変わるのかをわかりやすく解説します。
私有地でのドローン撮影を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
自分の私有地でもドローンの法律が適用になる
自分が所有する土地だからといって、無条件にドローンを飛ばせるとは限りません。土地が自分の所有地であっても、その上空でドローンを飛ばす行為には、航空法をはじめとした複数の法律が関係するためです。
たとえば、該当地域が人口集中地区(DID)に指定されている場合、飛行には事前の許可が必要です。また、空港やヘリポートの周辺エリアは、飛行高度や時間帯に制限があるうえ、特別な調整が求められることもあります。
さらに「高度150m以上を飛行する」「夜間に飛ばす」「目視できない場所で操作する」「第三者の真上を通過する」などの飛行方法を行うには、国土交通省への許可・承認が必須です。これらは申請を行い、審査を受ける必要があります。
使用するドローンが100g以上であれば、機体の登録や機体認証、リモートIDの搭載も義務づけられており、すべてが整っていなければ飛行は認められません。
つまり「土地の所有権がある=空も自由に使える」というわけではなく、上空の空域や飛行方法に応じて、別途の許可や技術的要件が必要になります。
他人の私有地の上空は一律に「飛行禁止空域」ではない
「他人の私有地の上空は飛んではいけない」とよく言われますが、実際には一律に飛行禁止とはされていません。
内閣官房が令和3年に発表した文書では、民法207条の「土地の所有権は上下に及ぶ」という規定に対し、その空間の範囲は“利益の存する限度”に限定されると明記されています。(参考|内閣官房小型無人機等対策推進室「無人航空機の飛行と土地所有権の関係について」)
ドローンが第三者の土地上空を飛行する場合でも「常に土地の所有者の同意が必要とは限らない」と示されました。
「利益の存する限度」とは、どのような空間か?
前述した、内閣官房が発表した文書の中の「利益の存する限度」とは、その土地の所有者が実際に使っていたり、安全やプライバシーのために気にかけている範囲の空間を指すと考えられます。
たとえば、家の屋根のすぐ上やベランダの周辺、庭先の上空など、人の目や音が届く範囲は、所有者にとって「気になる空間」といえます。クレーンや看板が動く高さなども同様です。
こうした空間にドローンが侵入すれば、所有者の権利を侵害していると判断されるおそれがあります。
一方で、建物から大きく離れた高度100m以上の上空を一時的に飛行する場合などは「所有者の利益が及ばない空間」として、同意が不要とされるケースもあるでしょう。
私有地でのドローン撮影におけるプライバシーへの配慮とは?
私有地であっても、ドローンを飛ばす際には周囲への配慮が欠かせません。
たとえば、敷地の隣接地に住宅がある場合、機体音やカメラの向きによっては「盗撮されているのでは」といった誤解を招く可能性があります。
こうしたトラブルを避けるには、事前に近隣へ飛行の目的や時間を伝える、必要であれば飛行範囲を明示するなどの対応が有効です。また、撮影した映像を公開・活用する場合は、個人が特定されないよう十分に配慮することも重要です。
たとえ自分の土地であっても、他者の視点を意識したマナーある運用が求められます。
私有地でドローン撮影したい場合プロに依頼するのも選択肢
私有地でドローン撮影を行う場合でも、法律や安全面の確認、近隣への配慮など、注意すべきポイントは少なくありません。
撮影目的によっては飛行ルートの調整や申請手続きが必要になったり、映り込む建物や人への対応を考えたりする必要があります。また、機体の選定や天候判断、利用用途によっては映像の構図などにも専門的な知識が必要です。
こうした負担やリスクを避けたい場合は、経験豊富なプロに依頼することで、安全かつ効率的に撮影を進められます。
用途に応じた撮影計画から編集まで一括で対応してもらえるため、特別な設備や知識がなくても高品質な映像を手に入れられるのが大きなメリットです。
まとめ
私有地の上空をドローンで飛行させる場合、一見自由に思えるかもしれませんが、実際には法律やマナーの観点から多くの注意点があります。
民法では「土地の上下に所有権が及ぶ」とされつつも、その範囲は「利益の存する限度」に限定されるという国の見解があり、同意なしで飛行できるケースもあります。
ただし、プライバシーの侵害や近隣住民とのトラブルにつながるリスクがある以上、慎重な判断と配慮が必要です。
さらに、所有地であっても飛行方法や空域によっては航空法の規制を受け、許可や申請が求められることもあります。安全性・法令遵守・周囲への理解の3つを意識し、必要に応じて専門家の力を借りることで、安心してドローンを活用することができるでしょう。